いじめられている君へ

 


 

死なないで、逃げて逃げて

 

 

劇作家・鴻上尚史さん

 

 

あなたが今、いじめられているのなら、今日、学校に行かなくていいのです。

あなたに、まず、してほしいのは、学校から逃げることです。

逃げて、逃げて、とことん逃げ続けることです。

学校に行かない自分をせめる必要はありません。

大人だって、会社がいやになったら、会社から逃げているのです。

次にあなたにしてほしいのは、絶対に死なないことです。

そのために、自分がどんなにひどくいじめられているか、周りにアピールしましょう。

思い切って、「遺書」を書き、台所のテーブルにおいて、外出しましょう。

学校に行かず、1日ブラブラして、大人に心配をかけましょう。

そして、死にきれなかったと家にもどるのです

それでも、あなたの親があなたを無視するのなら、学校あてに送りましょう。

あなたをいじめている人の名前と、あなたの名前を書いて送るのです。

はずかしがることはありません。その学校から、ちゃんと逃げるために、「遺書」を送るのです。

死んでも、安らぎはありません。死んでも、いじめたやつらは、絶対に反省しません。

あなたは、「遺書」を書くことで、死なないで逃げるのです。

だいじょうぶ。この世の中は、あなたが思うより、ずっと広いのです。

あなたが安心して生活できる場所が、ぜったいにあります。それは、小さな村か南の島かもしれませんが、きっとあります。

僕は、南の島でなんとか生きのびた小学生を何人も見てきました。

どうか、勇気を持って逃げてください。

 

 

 

(朝日新聞2006年11月17日掲載)