安里有生君の詩の全文
「へいわってすてきだね」
へいわってなにかな。
ぼくは、かんがえたよ。
おともだちとなかよし。
かぞくが、げんき。
えがおであそぶ。
ねこがわらう。
おなかがいっぱい。
やぎがのんびりあるいてる。
けんかしてもすぐなかなおり。
ちょうめいそうがたくさんはえ、
よなぐにうまが、ヒヒーンとなく。
みなとには、フェリーがとまっていて、
うみには、かめやかじきがおよいでる。
やさしいこころがにじになる。
へいわっていいね。へいわってうれしいね。
みんなのこころから、
へいわがうまれるんだね。
せんそうは、おそろしい。
「ドドーン、ドカーン」
ばくだんがおちてくるこわいおと。
おなかがすいて、くるしむこども。
かぞくがしんでしまってなくひとたち。
ああ、ぼくは、へいわなときにうまれてよかったよ。
このへいわが、ずっとつづいてほしい。
みんなのえがおが、ずっとつづいてほしい。
へいわなかぞく、
へいわながっこう、
へいわなよなぐにじま、
へいわなおきなわ、
へいわなせかい、
へいわってすてきだね。
これからも、ずっとへいわがつづくように
ぼくも、ぼくのできることからがんばるよ。
へいわなときにうまれてよかったよ 6歳の詩を絵本に
「へいわってすてきだね」。日本のいちばん西にある、沖縄県与那国島。そこの少年が書いた詩が絵本になった。昨年6月23日、糸満市であった沖縄戦の全戦没者を悼む式典で、本人が読み上げた。素直な言葉が、大人たちを動かした。
詩をつくったのは安里有生(あさとゆうき)君(7)。いまは父親の転勤で島を離れ、本島中部の沖縄市に住む。1年前はひらがなを習いたての、与那国町立久部良(くぶら)小1年生だった。島の豊かな自然で、平和のよさを表した。
ねこがわらう。おなかがいっぱい。やぎがのんびりあるいてる。けんかしてもすぐなかなおり。ちょうめいそうがたくさんはえ、よなぐにうまが、ヒヒーンとなく。
絵をつけたのは、人気絵本作家の長谷川義史さん(53)=大阪市北区。丸めがねに柔らかな関西弁。テーマは一貫して「生まれてきて、生きているだけでありがたい」。ダイナミック、そしてユーモアたっぷりに描き上げる。「今、やらなきゃ」。詩を読んですぐ、覚悟を決めた。
与那国島も訪れた。真っ青な海、広い空。恥ずかしがり屋の安里君とは二言三言しか言葉は交わさなかった。でも、平和であってほしいという願いは「話さずとも感じ合えた」。
下書きせずに白い紙に向かい、詩の素直な表現を、真正面から逃げずに描く。失敗した紙は山のように積み上がり、完成までに1カ月かかった。2000年のデビュー後、100冊以上を描いてきたが、一番苦労した一冊になった。
2014年06月21日 19:00 朝日新聞デジタル