『日本語大賞 文部科学大臣賞受賞作品(小学生の部)

 

■小学生の部
おとうさんにもらったやさしいうそ
佐藤 亘紀(さとう・こうき)
茨城県古河市立古河第二小学校一年

 

 ぼくのこころにひびいたことばは、「おとうさんはちょっととおいところでしごとをすることになったから、おかあさんとげんきにすごしてね。」です。

そのときぼくは二さいでした。

とても小さかったのでちょくせついわれたのはおぼえていませんが、いってくれたときのどうががおかあさんのスマホにいまでものこっているので、すきなときにきくことができます

 このふつうにおもえることばがぼくのこころにひびいたりゆうは、じつはこれがおとうさんがついたうそだったからです。

このことばの一しゅうかんごに、おとうさんははっけつびょうでしんでしまいました。

そして、このことばをおとうさんがのこしたのはびょうきがわかってにゅういんした日でした。

おとうさんは、あえないあいだにぼくがかなしまないように、わざとうそをつきました。

うそはふつうよくないけど、これは、おとうさんがぼくのためについてくれたやさしいうそだとおもいます。

このことばをどうができくと、おとうさんにあってみたくてすこしかなしいきもちになります。

でもかなしいだけじゃなくて、かなしませないようにうそをついてくれたおとうさんのやさしさをおもって「がんばろう!」とおもえます。

おとうさんがしんでしまったことはしっているけど、おとうさんのうそがほんとうになって、いつかよるおそくにドアのまえで「ドアをあけて。かえってきたよ。」といっているおとうさんにあいたいです。

こうおもえるのも、おとうさんのやさしいうそのおかげです。

 ぼくからおとうさんにつたえたいことがあります。

「おとうさん、うそがばれてるよ! だってまわりにびょういんのどうぐがいっぱいあるし、おとうさんがよこになっているし、めからなみだがちょっとだけでているし、こえがさびしそうだから。」

でもぼくは、だまされているふりをしつづけようとおもいます。

 おとうさんがやさしいうそをついてくれたおかげで、ぼくのこころはつよくなれています。

これからもおとうさんのことばをまもっておかあさんとげんきにすごしたいです。

おとうさん、やさしいうそをありがとう。

 

 

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