青山学院大と早稲田大が10年で首位逆転 高3生が選ぶ「雰囲気が良い」「自由な」大学ランキング

 

8/30(月) 10:00配信 〈dot.〉

 

 

高校生が大学を見る視点はさまざまだが、大学に抱く「イメージ」は志望校選びにも影響してくる。

リクルート進学総研が毎年実施している調査の結果を経年で比較すると、大学のイメージの変遷が浮かび上がってくる。

9月2日発売予定のAERAムック『就職力で選ぶ大学2022』(朝日新聞出版)から抜粋して紹介する

 

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受験生にとって最もイメージの良い大学はどこか──。この問いに答える調査がある。

リクルート進学総研は毎年、全国の高校3年生を対象に「進学ブランド力調査」を行っている。

項目は「伝統や実績がある大学は?」「おしゃれな大学は?」など多岐にわたり、結果は関東、東海、関西の3エリアに分けてランキング形式で発表されている。

 

2021年7月に発表された、最新の調査結果(関東エリア)を一部見てみよう。

たとえば前述の「伝統や実績がある大学」のトップ3は、1位東京大、2位早稲田大、3位慶應義塾大となっている。

一方で「おしゃれな大学」のトップ3は、1位青山学院大、2位慶應義塾大、3位上智大だ。

 

「おしゃれな大学」で、10年以上1位を獲得しているのが青山学院大だ。

同大はいま、多方面で受験生から評価されていることをご存じだろうか。

 

表は「明るい」「自由な」など、大学への感性的な評価を聞いた項目のランキングだ。

これら5項目で青山学院大はすべて1位だ。

ところが10年前のランキングを見ると、早稲田大が上回っている。

青山学院大、早稲田大、慶應義塾大の3大学について、2011年時点の順位→2021年の順位を比較すると次のようになる。

 

【明るい】青山学院=3位→1位、早稲田=2位→3位、慶應義塾=5位→6位

【校風や雰囲気が良い】青山学院=4位→1位、早稲田=1位→2位、慶應義塾=5位→6位

【クラブ・サークル活動が盛ん】青山学院=6位→1位、早稲田=1位→2位、慶應義塾=3位→4位

【学生生活が楽しめる】青山学院=4位→1位、早稲田=1位→3位、慶應義塾=3位→2位

【自由な】青山学院=2位→1位、早稲田=1位→2位、慶應義塾=5位→6位

つまりこの10年で青山学院大は受験生から良いイメージをもたれるようになり、ランキングでも大きく伸長したのだ。

いったいなぜなのだろうか。

 

■キャンパス移転と駅伝4連覇が影響

 

調査を行ったリクルート進学総研所長の小林浩さんはこう話す。

「青山学院大は13年、相模原キャンパスにあった文系の全7学部(当時)の1、2年次教育課程を、青山キャンパスに移転させました。

その結果、『志願度』項目のランキングでも、その前年の5位から3位へと順位を上げています。

ここが大きなポイントになったと思います」

 

高度経済成長期、人口集中を防ぐ法規制によって都心部に大きなキャンパスをつくれず、郊外に分散させた大学は多い。

青山学院大の相模原キャンパスは03年に開設されたが、その前年に法律が廃止され、徐々に都心回帰が進んだ。

文系学部の青山キャンパスへの移転は、1、2年生と3、4年生の分断をなくし、互いに交流させるために行われた。

 

「1年次から渋谷のキャンパスで最先端の情報に触れられるのではないかという期待が高まり、志願したい高校生が増えました。

また保護者からしても、子どもの下宿を1、2年と3、4年で引っ越したりしなくてもよくなる。

こうした意味で青山学院大のイメージに与えた影響は大きかったと思います」(小林さん、以下同)

 

もう一つ、大きな影響を与えた出来事がある。

15年の箱根駅伝で初優勝し、4年連続優勝を果たしたことだ。

「この快挙によって関東以外にも大学の知名度を高めました。

さらにメディアの取り上げ方が、なかなか活躍できなかった陸上競技部を、原晋監督が率いて伸ばしたという教育的なストーリーで、テレビなどのメディアにも積極的に露出していました。その効果はあったと思います」

 

■早稲田よりも「自由」なイメージ?

 

この10年で大きな変化を経験した青山学院大。

その影響がランキングにも如実に表れているが、「自由」という項目についてはどのように考えればよいのだろう。

小林さんは、青山学院大の公式YouTubeチャンネルに注目する。

 

17年に開設された「青学TV」は「大学からの自由な知の発信」を掲げる。

大学のYouTubeは広報が管理するものが多いなか、学生スタッフとともに運営されているのが特徴だ。

アップロード動画には、青山キャンパスで巨大ウォールアートの製作を依頼した香取慎吾さんへのインタビューや、箱根駅伝の選手・監督の報告会などが並ぶ。

「昔は専ら『おしゃれな青学』というイメージでしたが、駅伝で努力しているというストーリーも相まって、自由で明るく、親しみやすいといったイメージが浸透しました。

学生がYouTubeチャンネル運営に関わる昨今の動きもその一端にあるかもしれません」

 

こうした自由で活気があるイメージを、早稲田に感じる人も多いかもしれない。

 

「16年の首都圏私立大の定員厳格化以降、難関大の入試はこれまで以上に難化しました。

さらに、政治経済学部の入試での数学の必須化など、近年の早稲田は楽しく遊び学ぶというよりも、教育を重点化するほうにシフトしています」

高校生のイメージは今後どう変化するのか、注目したい。

 

(白石圭)

 

◎ランキングの見方「進学ブランド力調査2021」(リクルート進学総研調べ)。

 

調査方法は以下の通り。

 

【調査対象】

関東エリア(東京、千葉、埼玉、神奈川、茨城、栃木、群馬)、東海エリア、関西エリアの高校に通っている、2022年3月卒業予定者(調査時高校3年生)、計12万人。

【有効回答数】

1万2271人、回収率10.2%。

【調査期間】

21年4月2~30日。

【調査方法】

対象者に調査票を郵送し、記入後、郵送で回収。

【調査対象校】

調査対象エリア内にキャンパスが存在する全大学およびその他2エリアの国立大学すべてと、公立・私立大学の入学定員1000人以上の大学。関東エリア313校(自エリア248校、他エリア65校)。

※AERAムック『就職力で選ぶ大学2022』より