友達いるけどクラスに居場所がない?―でか美ちゃんが経験したうつ病のきっかけ

#今つらいあなたへ

4/6(水) 10:01配信

 

 

テレビのバラエティ番組への出演をはじめ、音楽活動やコラム執筆など、ジャンルを問わず活躍するでか美ちゃん。

2021年12月に旧芸名「ぱいぱいでか美」から改名した際にも話題になりました。

そんなでか美ちゃんは、過去にうつ病を経験し、今でも気分が落ち込むことがあるといいます。

また2015年にはTwitter上でいわれのない誹謗中傷に悩んだことも。

さまざまな苦難を乗り越えてきたでか美ちゃんにお話を聞きました。

 

(取材:たかまつなな/笑下村塾/Yahoo!ニュース Voice)

 

高校3年時に自分の居場所が分からずうつ病に

 

――うつ病になったきっかけは?

 

でか美ちゃん: 高校が進学校だったのですが、私は芸能界に行くと決めていたので専門学校のAO入試を受けました。

進路が決まるのが早かったので、まだ勉強している友達の邪魔をしたくなかった。

そこから「私は目障りなんじゃないか」「受験終わっていいなと思われているのでは」みたいな被害妄想から入って。

授業で先生が私に「分かる?」って聞きに来てくれるんですけど、「私よりもほかの子に教えてあげて」って思ったりして、学校に行きづらくなってしまいました。

それで親がメンタルクリニックに連れて行ってくれてうつ病と診断されました。

自己肯定感はめちゃめちゃ低かったのに、学級委員をやったり目立ちたがりではあったんです。

今思うとそういう役職がないと、うまく立ち回れなかったのかも。

だから、クラスで居場所が分からなくなったのをきっかけに、グーンと下がってしまいました。

 

 ――気を紛らわせる手段はあった?

 

でか美ちゃん: 普段は電車通学でしたけど、親が「学校に行きたくなったら車で送ってあげる」と言ってくれて、学校も協力してくれました。

診断された時はショックでしたけど、薬を飲めば学校に行けるというポジティブな要素も見つかったし、落ち込んでも「うつだから仕方ない」と冷静な自分もいました。

普段は元気ですが、今でも消えてしまいたいと思う瞬間は正直あって、これからも付き合い続けていく病気なのかなと思っていますね。

ふさぎ込んでいる時に一歩踏み出すのは難しいですが、調子が悪い時は風邪を引いたら病院に行くような感覚で、今でも気軽にメンタルクリニックに行っています。

そういう選択肢があれば、それほど悲観的にならずに済むのではないでしょうか。

 

SNSでの誹謗中傷

 

――誹謗中傷の内容は?

 

でか美ちゃん: ある芸人さんと付き合っているんじゃないか、というか「付き合ってますよね」という決めつけをされて、だんだん毎日そういうツイートを送られるようになりました。

私は間違っていたら「違いますよ」って返信するタイプなので否定したんですが、否定しても耳に入っていない感じで、繰り返し同じ内容を送り続けられて。それがどんどんエスカレートして、「嘘つき」とか人格否定してきたり、まったく関係ない投稿に「〇〇と一緒に行っているんだろう」とか、SNSの内容全てに自分の思い込みに基づいた返信をしてくるようになりました。

 

 ――生活や仕事にも支障が出た?

 

でか美ちゃん: 「これを投稿したらこう言われるんじゃないか」とかライブやイベントでは「もしこの人が来て何かしたらどうしよう」とかビクビクするようになりました。

Twitter上でずっと否定しても客観的に見るとただ揉めているだけに見えちゃって、イメージが悪くなっていたり。でも黙っていたら誹謗中傷の内容を信じる人も出てきて。

事実ではないことが広まるのがしんどくて、それが仕事に影響しました。

毎日、家にたどり着くまでが、ものすごく怖くて、夜道は走って帰っていました。

生活のすべてが蝕まれていきました。

もともとメンタルが強い方ではないので、かなりふさぎ込むこともありました。

ファンに会うと明るくなれたのに、それすらできなくなって、どんどん落ち込んでしまいましたね。

それで蕁麻疹も出てきたので病院に行くとストレスだろうと薬をもらったんですが、一時的に治ってもすぐ出てくる。しょっちゅう頭やお腹が痛くなるし、精神的なものから体に不調をきたすようになりました。

 

 ――友達など周りの方に助けは求められましたか?

 

でか美ちゃん: 最初は、あまり人に言えませんでした。

「気にしたら、ダメだよ」と言われると、励まそうと思って言ってくれているのは分かるのですが、自分の全てを否定された気持ちになってしまう気がして。

でも、勇気を出して周りの人に言ってみたら、寄り添ってくれる人がたくさんいました。

特に友達は自分より怒ってくれたり、私の代わりに掲示板を見ておかしな書き込みのスクショを撮ってくれたりしました。

心強かったし、そういう存在がいるだけで救われましたね。

 

 ――警察にも相談したそうですね。

 

でか美ちゃん: 生活安全課で親身に話を聞いてもらえました。

その時に当時のマネージャーさんが、私に送られてきたリプライや書き込みや中傷ツイートを全部プリントして持ってきてくれたんです。

殺害予告など決定的な書き込みはなかったので、すぐ動いてはもらえなかったんですけど、家の周りのパトロールをしてくれたり、「何かあったらすぐ電話してください」って連絡先も教えてもらえたりしました。

これ以上書き込んだらアウトだとか、接近禁止になると伝えることも約束してくれました。

これだけでもストレスは減ったし、パトロールしてくれているだけで全然違うと思いました。

 

 ――相手に向けて自身のブログで最後通告。どのような思いだったのでしょうか?

 

でか美ちゃん: 最初は裁判を起こすつもりだったんです。

私がブロックとか無視をすると、私の知り合いやファンのSNSにも書き込むようになって、さすがにキツくなったので。

でも、裁判を起こしたところで良くならないとも思っていて、 “いい人”ぶるわけではないですが、裁判で勝ってお金をもらって、相手の社会的信用を落として、「だから何になるんだろう」と思っていました。

私は止めてくれたらよかったし、精神的にも参っていたので、「誹謗中傷が終われば何でもいい」みたいな気持ちで書きました。

それ以降、毎日来ていたのが少しずつ減って、今は何年も来てない状態です。

 

 

加害者にならないために

 

――SNSは無意識のうちに加害者になることもありますよね?

 

でか美ちゃん: 私は20歳くらいからTwitterを始めたのですが、昔の書き込みを見ると致命的ではないけれど失礼なこと言ってるんです。

先日、明石家さんまさんの番組に出る機会があって、過去のSNSを調べたら「さんまってやっぱおもろ」みたいな投稿をしていて(笑)。

これは加害ではないですけれど、昔の私が何を書いていたか全然思い出せない。

だから何気ない一言で相手を無意識に傷つけて加害者になってしまうことは誰にでも可能性があると思います。

 当時の私は、向こう側に一人の人間がいることが想像できてなかった。

自分に余裕があって健やかじゃないと、他人の気持ちなんて考えられない。

誰かを攻撃したくなったら、自分のことをまず考えてみてほしいですね。

 

 ――似たような状況で苦しむ子どもたちに伝えたいことは?

 

でか美ちゃん: 誹謗中傷を書かれることで惨めな気持ちになりますし、優しい人ほど自分が悪いと思っちゃう。

でも絶対にそんなことはないし、ネットに書かれていることなんて鵜呑みにしなくていい。

まずは相談すること自体にストレスがあるけれど、実際に自分の身近にいる親や家族、担任とか別の好きな先生でもいいので、勇気を持って色んな人に言ってほしいですね。

身近なところで相談できないなら、しかるべき公的機関を調べれば出てきます。

あとはインターネット上の「個人」ではなく「団体」を探してほしい。

弱っている所に浸けこんでくる人ってたくさんいます。

私が中高生の頃、自分は子どもじゃないという感覚があったけれど、甘い言葉で「なんとかしてあげますよ」って言って来る個人は、皆が思っているよりずっと恐ろしい存在なんです。

 

 

【千葉大学教育学部教授 藤川大祐先生に聞きました】

 

――でか美ちゃんのように、心の苦しさや誹謗中傷で悩む人はどのようにすればいいのでしょうか。

 

誹謗中傷やいじめ問題に詳しい、千葉大学教育学部教授の藤川大祐先生に聞きました。

 

藤川大祐先生: でか美ちゃんの場合、苦しい時に助けを求める希求行動をされており、これは重要です。

誹謗中傷によって心が苦しくなった場合、一人で我慢して、苦痛を抱えると症状が重くなり回復しにくくなります。

そのために、保護者や先生、学校のスクールカウンセラーに早期に相談したり、病院に早めに行ったりすることが重要です。そこでも相談しにくければ、電話やメール相談などの窓口を利用して話を聞いてもらい気持ちを楽にすることも大切です。

心を回復させるために、睡眠と食事をしっかりとることも欠かせません。

 

 ――新学期は、子どもの自殺率が上昇してしまいます。

これから新学期を迎え心がつらい子どもたちには、早めに学校に相談してほしいと言います。

 

藤川大祐先生: 逃げればいいとよく言いますが、逃げても学校を休むことに自己嫌悪を持ってしまうことがあります。

だから一人で判断せずに誰かを頼ってください。

皆さんが抱える悩みは、あなただけの悩みではなく、似たような悩みを持っている人が多いです。

あなたの悩みには具体的な対応策があることがかなり多く、早めに相談すれば先生が学校で見守ることができます。

 いじめの場合は、先生が目を離さないようにすることもできますし、心の不安は養護教諭と連携し、学校でつらくなったらすぐに早退することや病院につなげることもできます。

誰かに話すことで、少し楽にもなりますし、解決策も学校で考えられるので、ぜひ勇気をだして相談してみてください。

 

 

 


でか美ちゃん

 

日本の歌手、タレント。三重県松阪市出身。バラエティ番組『有吉反省会』で人気になる。

音楽ユニット・APOKALIPPPSのメンバーでもあり、ライブを中心にDJや司会業などを行う。

2021年12月、「ぱいぱいでか美」から「でか美ちゃん」に改名。

 

 

藤川大祐千葉大学教育学部教授。

 

専門は教育方法学。

メディアリテラシー教育研究の第一人者。

内閣府「子供・若者育成支援推進のための有識者会議」構成員や千葉市教育委員などを務め、複数の自治体でいじめ対策組織の委員等を歴任。

 

 

※この動画記事は、笑下村塾「たかまつななチャンネル」とYahoo! JAPANが共同で制作しました

 

 

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