ありがとう
ありがとう、 私決めていることがあるの。
この目が物をうつさなくなったら目に、 そしてこの足が動かなくなったら、足に 「ありがとう」って言おうって決めているの。
今まで見えにくい目が一生懸命見よう、見ようとしてくれて、 私を喜ばせてくれたんだもん。
いっぱいいろんな物素敵な物見せてくれた。
夜の道も暗いのにがんばってくれた。
足もそう。 私のために信じられないほど歩いてくれた。
一緒にいっぱいいろんなところへ行った。
私を一日でも長く、喜ばせようとして目も足もがんばってくれた。
なのに、見えなくなったり、歩けなくなったとき 「なんでよー」なんて言ってはあんまりだと思う。
今まで弱い弱い目、足がどれだけ私を強く強くしてくれたか。
だからちゃんと「ありがとう」って言うの。
大好きな目、足だからこんなに弱いけど大好きだから
「ありがとう。もういいよ。休もうね」って言ってあげるの。
たぶんだれよりもうーんと疲れていると思うので……。
とこんなふうに続いていくんですけれどね、
私ね、なんてすごいんだろうって思ったんですね。
だってね、
たとえば、私、山の方に住んでいるんですけれどね、車がないとね、どこにも行けないんですよね。
お買い物にも行けないし、学校にも行けないし。
でもね、あるとき、参観日の大事な日なのに、車が途中でとまっちゃったんですよね。
それでね、どうして、こんな大事な日にとまっちゃうのよ。新しいのに買い換えちゃうからね、って車に言ったんですね。
私はそのとき、雪絵ちゃんのありがとうの詩を思い出しました。
私は車がなかったらどこにも行けないんですね。
毎日毎日運んでくれているのに、ありがとうって思ったことがあっただろうか?
それなのに、私は動かなくなったら、「なんでよ」なんて思って、
おまけに、私がガソリンをちゃんと入れてなかったからだったんですよね、
それなのに、車を責めている私ってなんだろうってそんなふうに思いました。